母校と図書室の貸出カードの話

2017年3月に母校の小学校が廃校となりました。
平成の大合併で2006年に隣接市と合併するまでは村だったような山間部にある田舎の学校だったため、
小学校の同級生は30人ちょっと。
1クラスのみで、6年間クラス替えもなく過ごしました。

交通の便も悪い過疎地で、わたしの卒業後も児童は減り続け、
その後、帰省の際に聞いた時は1クラス20名を割るような人数になってしまったというものでしたが、
さらなる児童数減少を経て、2017年3月にとうとう廃校となりました。

実家から小学校までは児童の足で40分ほどかけて通学していました。
(大人になってからは、おそらく30分もあれば到着してしまうかと思います。)

東京に出てから話すと驚かれるのですが、通学路は登山道のようなところでした。

通学路

この山道を小学校6年、中学校3年、計9年間登下校で歩いて(中学校へはさらに距離が長くなり片道1時間弱に。)、
さらに、部活をするようになってからは帰宅が夜になったので、街灯が少なく真っ暗な中、
毎日良く歩いたな、と思います。

今同じことができるかと言われたら、何か、いろいろな見えないものに遭遇しそうでちょっと怖いです。

昔はよく雪も降っていたので、凍結した斜面で転倒して骨折したりもしました。

通っていた幼稚園は小学校の真ん前にありましたが、かなり早くに閉園となり、今はもう更地になっています。
小学校。廃校後の2017年4月。

岩井俊二監督の「LoveLetter」(主演:中山美穂)という映画に、
図書室の誰も借りないような本ばかりを借りて貸出カードに名前を記載し、
卒業してもう何年も経った後の在校生が本の整理の際に同じ名前ばかりが記載されている本を多数発見、
「藤井樹(カードに記載された名前)」ゲームと名付けて図書カード探しをするというエピソードがあり、
この映画を小学生の時に観て憧れて、
わたしも6年生の時に卒業までの間ずーっと、小学校の図書室の誰も借りないような本ばかりを借り続けて、
貸出カードに名前を記載していくということをやっていました。

映画の場合は、同姓同名の「藤井樹」という男女がいて、
男子・藤井樹が、女子・藤井樹を想って名前を書いていたという設定なので、
単に自分の名前を書いているのは趣旨と全く違うのですが、
小学生の時は、「誰も借りない本」というのが何だかおもしろくて、
図書室のすみっこにある化学の大きな本や、
古びている忘れ去られたようなシリーズ、歴史書などの本を片っ端から借りていた記憶があります。

きっとこの先この本を借りる人なんて誰もいないのだろうな、と思いながら貸出カードに名前を記載し続けて、
卒業後に、そういえばあの貸出カードはどうなったんだろう?と時々思い出すことがありました。

廃校の話を聞いたのは、もう貸出カードのことなんて思い出さなくなった頃でしたが、
なんとか図書室に入ることはできないだろうかと、地元のいろいろな人に話していたところ、
自治体の職員さんたちの連携で休日に鍵を開けて頂くことができ、
再び母校を訪れることができました。

廊下
教室。すでに机や椅子は搬出された後でした。
体育館。意外と小さい。
校歌。群馬県の小中学校の校歌には赤城などの山が入っていることが多いという記事をみたことがありますが、
わが母校ももれなく赤城が歌い出し。
図書室。
この辺に書いたような気がするな、と思って端から確認してみましたが、既に貸出カードが入っていないものばかり。
本の入れ替えやシステムの変更などがあり、
当時の本はすでにもう入れ替えでなくなっていたり、図書カードが設置されていなかったりなどで見つけることができず。

あんなにたくさんの本の貸出カードにに名前を書いたのに、
手が黒くなるほどいろんな本を探したけれど、見つけることができず…、
この読んだことがある!と思った1冊を手に取ったら1枚だけ発見することができました。
これは、誰も借りなそうな本に名前を書いていくため、というより、普通に読んだ本だと思います。

記念にこの1枚は頂いて帰りました。

後輩たちの誰かが「何か変な本ばっかり借りている奴がいるな」と思っておもしろがってくれていたことがあったなら嬉しいですが、誰にも借りられないまま入れ替えで処分されてしまった気もします。

でも、訪れることができて良かった。
ご対応頂いた職員さん、ありがとうございました。



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