旅していて、「あ!あれを忘れた…」と忘れ物に気づいても、
たいていは旅先で買えたりするものが多く、その旅自体はリカバリーできたりするものです。
もしくは、旅先のホテルや飛行機の中にうっかり忘れ物をして、後日送ってもらった経験がある人もいるのでは。

これまで、約90島ほどの離島を旅してきましたが、
離島を旅しているときに忘れ物をしてしまうと、取り返しのつかない事態に陥ることがあります。
本土から気軽に訪れることのできる場所もあるのですが、
中には、船が週に1~2便しか来ない島、決して日帰りできない島、船が7割欠航する島、定期航路のない島…。

そのような、アクセスが悪く、どうにもできない島に限って、忘れ物をしてしまうのが旅の常というか、
愚かな人間の性というか。

ここでは、
あんなに気を付けていたはずなのに、どうしてか忘れ物をしてしまうわたしの愚かなこぼれ話と、
それを助けてくれた人たちの心温まるエピソードをご紹介いたします。

奄美群島・与路島での忘れ物

奄美群島、与路島。本土・鹿児島からは直接行くことができず、奄美大島を経由する二次離島。
すぐ隣にある請島とセットで、奄美の人でもあまり訪れる人はいないといわれる秘境で、
日曜日以外は、日帰りすることができません。
2017年に、奄美群島、加計呂麻島・請島・与路島・喜界島を旅した時の忘れ物の話。
奄美群島の旅で、奄美大島→加計呂麻島→(奄美大島を経由)→請島→与路島→(加計呂麻島→奄美大島を経由)→喜界島へと渡りました。

与路島は、人口は約100名程度で、港の前に集落が1つ。徒歩で1時間もあれば歩けてしまうという島。
島内に商店が1軒もなく、区長さんの家の玄関先で、食品や電池などの雑貨、家庭用冷蔵庫に入れた調味料や肉野菜を売っているという島でした。
この島で宿泊した民宿の部屋に、スマホの充電器を置いてきてしまった…という忘れ物の話。

民宿みどり

与路島で宿泊した民宿みどり。確か、おばあちゃんの名前がみどりさんだったような…。
ちなみに、奄美弁がとにかくすごくて、予約の電話の時、何度も「9月です」といっても、毎回「ごがつだね」と返答があって、「きゅうです、来月の、9月」と念を押して、「はいはい、ごがつだね」と。
本当に予約ができているのかとても心配だったのですが、ちゃんと予約できていました。

民宿みどりの部屋

2017年に宿泊しましたが、この時は100円入れて使用するタイプのエアコンがありました。現在もまだあるかな?
どこをどう見ても民家の部屋に泊まるスタイル。離島に行くと時々このタイプの部屋に泊まります。嫌いじゃないです。

民宿みどりさんの居間

居間で朝食も夕食も頂いたのですが、食事は団らんスタイル。民宿のご家族も一同揃っての食事だったので、まるで田舎のおばあちゃんちに帰省したような気分を味わわせていただきました。が、話が全く分からない…!笑
みんな奄美弁で話すので、びっくりするほど何を言ってるのか分からない。
ただ、雰囲気がとても楽しかったので、話の内容は理解できなかったですが、一緒に大笑いしていい時間を過ごしたという良い思い出。

与路島 区長さんの家の店

商店がない与路島では、区長さんの玄関先でお菓子や食料、生活雑貨を売っています。
時間をかければAmazonでなんでも届く時代だとしても、この場があるのとないのではいざという時の生活がものすごく違うんですよね。

家庭用冷蔵庫が冷蔵ショーケース替わり

家庭用冷蔵庫にケチャップやソース、肉や魚、野菜を入れて売っています。
島で暮らす人たちの命綱。


民宿みどりさんに1泊お世話になり、翌日は午前中に海上タクシーで与路島を出発(なんと、海上タクシーの船長さんは民宿みどりさんの息子さん。笑)、加計呂麻島→奄美大島を経由して喜界島へ。
喜界島へは夕方過ぎに到着。
レンタカーを借りて宿泊先のホテルに到着後、与路島の民宿みどりの部屋のコンセントに携帯の充電器をさしたまま来てしまったことに気づきました。
気づいてもどうにもならないのが離島の旅。
連絡したところでどうにもならないので、充電器は諦め(いつか誰かが宿泊する際に使ってもらえたら、と思いながら)、
喜界島で、充電器を探すことに。
幸い、喜界島は与路島に比べると大きな島で、スーパーなどもあることから、スーパーに向かいました。
しかしこの時点で、すでに夜。
閉店したお店もありましたが、まだ営業中のお店へ向かい、充電器を探したところ、…ない。
お店の人に尋ねると、このお店にはなく、すでに閉店してしまった方のお店に売っていたとのこと。
明日開店してから買えばいい、というのはその通りですが、
せっかくの旅先での滞在時間を充電時間の待機にとられるのももったいなくて(この当時はまだ、急速充電はなかったと思います)、スマホの充電は夜に済ませて置きたかったなあ、と落ち込んでいたら、
このスーパーの店員さんがその様子を見かねて、「ドコモの充電器を持ってる人いる?」と従業員に聞きまわり、
「ここで充電して行ってください!」と。
いや、ちょっとそういうことでもないんですが…とは思ったものの、旅人へのその親切が嬉しくて、
スーパーで充電器を繋ぎながら、お店の閉店時間までの時間=携帯の充電の1メモリ(当時は電池型の表示のメモリが1つずつ増えるタイプでした)が増えるまでの40分くらいを、駐車場に停めたレンタカーの中で、漏れてくるスーパーの灯りで読書をしながら待ったのもいい思い出です。
店員さん、どうもありがとうございました。

喜界島で泊ったホテル

ちなみに、この充電器忘れには続きがあって、スーパーで充電した後ホテルに戻り、フロントで充電器の顛末を話したらなんと「ホテルに貸与できるものがありますよ」と貸していただきました。笑
最初から聞けばよかったものを…、と思いながらも、店員さんの親切は忘れられません。

東京の秘境・青ヶ島への忘れ物

東京都にありながら、日本一人口の少ない自治体・青ヶ島。
本土の東京からは直接行くことはできず、八丈島を経由していく必要のある二次離島ですが、
船の欠航率が高く(時期によっては7割以上が欠航)、就航の確率の上がるヘリコプターは9席のみとなり、島の方や業者さんとの争奪戦が予約開始時間から行われる…と、滅多に訪れることのできないアクセス難関島です。
島内に番地はなく、郵便番号と名前だけで手紙が届いたり、
世界的にも珍しい二重カルデラの地形は、上空から見下ろすとまるでドラクエの世界のようだとネットで話題になったり、
(最近では、注目を集めるYouTuberさんが誕生したりと)
話題が絶えず、多くの人がいつかは行きたいと憧れを抱くも、なかなかハードルの高い離島です。

八丈島まで行くも船が出ず青ヶ島への上陸は断念…を何度か経て、
2014年に訪れた時の忘れ物の話。

往復ともにヘリコプター争奪戦を勝ち取りましたが、帰りのヘリコプターは天候不良で飛ばず、
島内で足止めを食らいました。
わたしは1泊の延泊で済みましたが、長い人は1週間以上閉じ込められてしまうことも珍しくないそう。
青ヶ島を訪れた知り合いに話を聴いても、何の問題もなく帰れた人のほうが珍しいです。

羽田から八丈島までは飛行機、八丈島から青ヶ島まではヘリコプター。
その道中に事件が発覚します。
八丈島へ向かうANAの機内でカメラを確認すると電源が入らない…。おかしいと思って確認すれば電池が入っていないじゃないですか。
こんな嘘みたいな忘れ物をするんだ…!と自分でも驚いてしまい、頭が真っ白に。
やっと訪れることができた青ヶ島、次に来られるのはいつか分からない。
それなのに、わたしの一眼レフには電池が入っていない…。
こんなことが本当にあるんですよね。
乾電池ならばきっと青ヶ島の商店でも手に入りますが、さすがに一眼レフのリチウムイオン電池は八丈島空港でも手に入るはずもなく。

当時のツイート

がっかりした気持ちでヘリコプターに乗り込み、一路、青ヶ島へ。

この当時は、ガラケー+タブレット、という組み合わせを持っていたのですが、写真撮影端末はタブレットへと変更。
2014年当時なので画質は落ちますが、それでもパシャパシャと気持ちを切り替えて。
ヘリポートへ迎えに来てくれた民宿のご主人の車に乗り、港へ立ち寄った時に第二の事件は起こります。
写真を撮りながら車に乗り、そのまま膝に乗せて置いたタブレット。
その存在を忘れて港に着いて勢いよく車を降りた時に、膝の上から飛んでいき不運にも角から地面に落下。
これまで、本土で生活していて複数回の落下を経験してきましたが、四隅に多少の傷はついても無事だった画面が、バッキバキに。これでもかという程にバキバキにひび割れているじゃないですか。もはや何も反応しない。
聴いても仕方ないのは分かりますが「青ヶ島にドコモショップはありませんよね?」と聴いてしまったくらいには動揺していたようです。

当時の悲痛なツイート笑
青ヶ島の人口が170人程度なので、つぶやくのより直接訪ねたほうが早そう

記録媒体はガラケーのみという状態になってしまい、テンションはダダ下がり。
わたしのあまりの落ち込みようを見かねて、
宿のご主人が「そうだ、キャンプをしている人がパソコンに詳しいから何とかしてくれるかもしれない!行ってみよう!」と、青ヶ島でキャンプをしながら、どんな仕事をしていたのか結局分からずじまいでしたが(2022年現在であれば、リモートワークやらワーケーションやらなんら驚きもしないのですが、2014年当時は、青ヶ島でパソコンで何かやってる、というと投資家以外に思いつかなかったです)、そのキャンパーさんは、すでに青ヶ島に1ヵ月ほど滞在し、民宿の方の畑を手伝ったりしながら時々ネットで買い物をして、テントに荷物を配達してもらいながら過ごしていた方で、わたしもとにかく必死ということもあり見ず知らずのそのキャンパーさんに状況を説明し、何とかなりませんか?と助けを求めると、
画面がバッキバキに割れていたタブレットにコネクタとマウスを繋ぐことで、
マウスで操作ができ、メールの送受信などができるようになりました。
写真が撮れないということは解決しませんでしたが、この時はPCを持たずに旅に出ていて、マウスを繋いでタブレットでのメール送受信ができたことは、仕事の夏季休暇で来ていた立場としてはかなりありがたかったです。
ちなみに、この時お世話になったこのキャンパーさんとは別の旅で再会しています。

その時の模様
マウスでタブレット操作をしたのはこれが初めて。笑

心落ち込んだまま、ガラケーを片手に島を散策した1日目。
画面に映る解像度の低い小さな写真を見てはまた落ち込むを繰り返し、宿でお夕飯を頂いた後、
島に2軒のみある居酒屋のうち、1軒へ繰り出してみることに。
店のドアを開けると貸し切りのごとく、内輪の飲み会が開かれてていて、「おっと、これは入れない…」とドアを閉めようとしたときに、飲み会に参加していた島の方が、「おいでおいで!座って座って!」とその輪に入るようにとお誘いくださり。
これで断るのも違うなと、その飲み会に参加することに。
島の学校に勤務する先生のお誕生日会に島の人が加わった形の飲み会で、
いろんな話をする中で「カメラの電池を忘れ、タブレットを落として画面はバキバキ」というギャグ漫画のような不幸を披露すると、その飲み会にいた学校の先生が、よければデジカメ使ってください、とコンデジの本体を貸してくださいました。
SDカードは持っていたので、お借りしたコンデジにSDカードを入れて、そこから先は撮影をすることができました。

ガラケーで撮影した青ヶ島の風景

電池!電池!電池がない!と、この世の終わりくらいに落ち込んでいましたが、そんな手があったとは。
青ヶ島は東京都なので、東京都採用の教員の方が赴任してきます。
カメラを貸してくださったのはその年に赴任してきたという女性の先生。
ちなみに、島という土地柄か、赴任した教員同士が結婚するということは多いと聞きました。
わたしが滞在している間も、青ヶ島に赴任した教員同士の結婚のお祝いパーティーが開催されていて、民宿のご主人が出し物をすると張り切って出かけて行ったのを覚えています。
青ヶ島については、滞在中、いろいろなことがあったので、また改めて書き記します。

青ヶ島へ向かうヘリ
民宿のご主人とキャンパーさんのところへ向かう途中

種子島へ向かう途中、鹿児島空港近くの宿での忘れ物

2022年5月。種子島へ向かう際に宿泊した鹿児島空港での忘れ物。
パンチのきいたホテルでしたが、宿の方がとても温かく、忘れられないエピソードとなりました。
別の記事に記したので、こちらにはリンクを掲載しておきます。
種子島へ向かう途中のこぼれ話

受付が帰ってしまっていたビジネスホテル

そんなこんなで、いろんなところにいろんな忘れ物をしながら、旅をしてまいりました。
他にも、旅先のコインランドリーに靴下を片方忘れたり、買ったお土産を忘れたり…、ちょいちょいいろんなものを忘れていますが、旅に慣れるにつれ、用心深さが沁みついて、とんでもない忘れ物は減っているように思います。
せっかくの旅ですので、みなさんも忘れ物にはお気を付けください。

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