三宅島の一期一会

三宅島で宿泊した民宿に、ひとり旅の若者がいた。
食堂で顔を合わせる程度だったけれど、他にもう2組客もいて特に会話はしなかった。

三宅島へのアクセス方法は竹芝桟橋からのフェリーと調布空港からのプロペラ機(小型飛行機)とがある。
フェリーの場合は6時間半かかるので、夜出発して早朝に到着する分にはいいのだが、帰りは13時半には島を出ないといけない。
1日3便ある飛行機を利用すると、片道50分で到着できるので、最終便で変えれば夕方まで島に滞在できる。
今回の訪問では飛行機を利用した。

2泊3日の滞在、最終日に宿をチェックアウトして、
昼食には島の商店で、滞在中にぜひ食べようと決めていた島のりののり弁当を買い、
弁当を食べようと思っていた海沿いの見晴らし小屋へ向かった。

見晴らし小屋には先客がいて、場所を改めようかとも考えたが、
スペースに余裕がありそうだったので、断りを入れて利用させてもらうことにした。

近づくと、宿で一緒だった若者ということが分かった。

「こんにちは、お弁当を食べる間、こちらにかけてもいいですか」
断りを入れて、同席させてもらった。

「宿が一緒でしたね。ひとり旅ですか?」
そんな糸口から話を聞いてみると、なかなかユニークな若者だった。

見かけが日本人で、普通に挨拶も交わしたことから何の違和感もなかったのだが、
日本語はあまり読めないという。
イギリスで働く日本人夫婦の元に生まれて、親の影響で日本語は話せるようになったけれど、イギリスの学校に通っていたのでネイティブ言語は英語、かつ識字は英語。
話し言葉の日本語は問題ないけれど漢字や文法が難しくてあまり文字が読めないと笑っていた。
大学までをイギリスで卒業して、就職を機に家族と離れ、両親のルーツである日本へ。
外資系の企業で働いているので言葉は問題なく、日本は暮らしやすい場所だと言った。
不運だったのは、就職後間もなくコロナ禍となり、途中でコロナ罹患も経験。医療サービスや行政との連絡などに苦労したそう。

若者は、住まいが調布で、毎日飛行機が発着するのを眺めていたけれど、一度も利用したことはなく、どこに行くのかも知らなかったと言う。そして、調布からの引っ越しを決め、引っ越し日の前の週に、一度この飛行機に乗ってみたいと、飛行機が発着する4つの島(伊豆大島、新島、神津島、三宅島)から三宅島を選んでやって来たそうだ。
「こんな場所が日本にあるとは知らなかった」
若者はそう言っていた。

そこそこ広い面積のある三宅島内をレンタカーも自転車も借りず、ひたすら徒歩で巡っていたらしい。

弁当を食べ終わったタイミングで一度別れ、
帰りの便が一緒だったことから空港で再開。

イギリスと日本の暮らしの違いなどを多数聞かせてもらい、
やっぱり日本は暮らしやすいんだな、と勝手に納得して別れた。

三宅島の一期一会。

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